クラシック音楽の思い出

 

中学一年生の音楽の授業で、ごくたまにクラシック音楽の鑑賞があった。

 

二十代後半の音楽教師は、ブラスバンド部の顧問でもあり、あだ名もクラシックの作曲家の名前がついていて、生徒間では本名で呼ぶ者はいなかった。

 

テープレコーダーだったか今となっては記憶が曖昧なのだが、当時の大げさなサイズの機器を携えて教室に入ってくるなり、壇上の机にそれをセットするや曲名と作曲家名だけを紹介したあと、チャイムがなるまで終始クラシック音楽を流し続けた。

 

誰ひとり私語を口にする者はいなかったが、皆が皆、曲に傾聴していたわけではなかった。

 

思い思いの姿勢のまま、おそらく半数以上の生徒が居眠りをしていたかもしれない。

 

時間と共に堂々と机に突っ伏して寝てしまう生徒も少なくなかったが、教師は全く関心を払う様子もなく、教壇の脇で椅子に足を斜めに組んで掛けたまま、ストイックな表情をかもしながら微動だにせず曲に聴き入った。

 

 

 

 

普段から昼寝の習慣がない私は、室内を無遠慮に見回したり、窓枠に切り取られた遠くの空を眺めたりしながら、延々と続く退屈でしかたのない時間を持て余した。

 

後年、何ともったいない過ごし方をしていたことかと悔やまれたものだ。

 

≪終≫

 

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