魚は…

義母が存命のころのエピソードである。

 

夫の実家を訪ねたおり、義母と話し込んでいたところ、魚の話になった。

 

時季や漁獲量、漁場によって魚の値段は高下するだろう。

 

おそらく何らかの理由でスーパーに並ぶ魚類の価格が高騰していたのだと思うが、私が「魚が高い」と嘆くと、義母が、

「漁師は船底の板一枚で命を繋いでいる。だから魚を高いと言ってはいけないらしいよ」(←我が地域の方言で)

と、私をとがめるでもなく、義母自身を納得させるかのように呟いたことがあった。

 

それは妙に私の腑に落ちて、無言で何度もうなずいた記憶がある。

 

それ以来、私のちょっとしたこだわりで、魚を高いと感じても口に出さないように意識している。

 

魚を高いと感じたら買わなければよい。

 

あるいは、それでも納得して買えばよい。

 

魚に限り、「高い」と口に出すことは何だか少し気が引けるのだ。

 

 

 

≪終≫

 

 

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